Unboundedly

統計的因果推論・疫学についてのお話

2017-01-01から1年間の記事一覧

炭水化物は体に悪い?脂質をたくさん摂るほど健康に良い?:2017年世界一に選ばれた科学論文を解説

久しぶりのブログ更新です。今回は、「炭水化物を摂取すると死亡率があがる」「脂肪はたくさん摂っても死亡率に影響がない」ことを示したとして2017年世界中で話題になった以下の論文について、論文自体の問題点やメディアで取り上げられている内容の誤りに…

「交互作用」とはなにか:介入効果が一様でないときの統計手法~その目的と分類、解釈~

今回は「交互作用(interaction)」と呼ばれる概念について書いていきます。端的に言えば、”人によって効果が違う”という現象を見る統計学の考え方だと思います。例えば「薬Aが病気Dのリスクを10パーセント下げる」といったとき、実はその薬は女性では効果が…

観察データを用いた因果推論で生じるバイアスの程度を考える:感度分析(Sensitivity analysis) & "E-value"入門

さて、今回からイデオロギー色の少ないブログ活動に戻ります。前回の受動喫煙に関する記事の中で、「感度分析("Sensitivity Analysis")」というテクニックを紹介しました。 どうも私の言葉足らずか、このテクニックに関して多くの方に誤解と混乱を招いたよ…

受動喫煙防止法について論点整理②:サイエンス × 価値観 ≒ 政治でつくるザッカーバーグ的理想世界

なんだか壮大なタイトルになりました(笑) 前回は「受動喫煙による健康影響・死亡数」なるものがどうやって計算されていてるか、どの程度信用できる数字なのかについて整理しました。この辺りは、私の専門性が少しだけ活きてくる部分であり、(少なくとも私が…

受動喫煙防止法について論点整理①:受動喫煙による健康リスク・死亡者数の推定はどのくらい信用できるか?

受動喫煙の防止策として、室内全面禁煙を目指す厚労省側とそれに反発する自民たばこ議連が争っています。本件に関しTwitter上でも、なかなか面白いディスカッションがおきています。 室内禁煙による受動喫煙対策は「科学的根拠(エビデンス)」に基づくもの…

【点と矢印で因果関係を考える】因果関係がないときにデータから関連が生じるパターンとその対策まとめ:因果ダイアグラム(DAG)によるバイアスの視覚的整理

よく「因果関係と相関関係は違う」といいますが、具体的にどのような場合に両者が一致しない(バイアスが生じる)のかをDAGをつかって整理します(簡単にそれぞれのバイアスへの対応策にも言及しますが、各手法の詳細は別の機会に譲ります)。

"矢印"をつかって因果関係を視覚的に整理する:因果ダイアグラム(DAG)入門②〜読み方・書き方の基本ルール〜

前回は因果ダイアグラム(DAG)という概念の導入として、そもそもなぜDAGが必要とされるのかについて書いてみました。 今回はDAGシリーズ第二弾として、実際にDAGを”書いて”いくうえでの基本ルールとDAGの”読み方”について整理してみようと思います。DAGの読…

"矢印"をつかって因果関係を視覚的に整理する:因果ダイアグラム(DAG)入門①〜なぜDAGが必要なのか〜

今回はDirected Acyclic Graph(DAG)と呼ばれるものについて書いてみようと思います。「ダグ」と読みます。日本語では「非巡回有向グラフ」とかいうなんだか難しそうな名前で呼ばれているようです。DAGが何かを一言で説明するとすれば「いろいろな要因を矢印…